2006年06月08日

難病患者の雇用管理・就労支援に関する実態調査

houkoku.jpg
中間報告書がやっと送られてきました。
みなさんのところには届いているのでしょうか?
雇用問題研究会のホームページにPDFが掲載されると聞いていますが、まだのようです。

難病患者の職業上の課題の解決に向けての、企業内の雇用管理の重要性をかなりクローズアップしています。企業がちゃんと取り組まないと、いくら就職に成功しても継続が大変だろうという実態もよくわかりました。しかし、重要なのは、こういう雇用管理を行えば、難病患者の多くが問題なく働けるだろうという見通しを示せたことです。

今、難病患者の就業支援のモデル事業のプランを検討中ですが、効果のある支援に資源を集中させるため、少し視点を変えて「やっても問題解決や軽減につながっていない支援」を洗い出しています。どうも、現状で行われている支援や雇用管理の半分程度がそのようです。かなり、インパクトのある支援モデルをつくれそうな予感がする結果でした。


posted by YH at 17:51| Comment(0) | 研究会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月29日

医学的視点と生活機能的視点

 WHOは21世紀の健康問題に対応して、従来の国際疾病分類(ICD)とペアになる新たな国際分類である国際生活機能分類(ICF)を2001年に発表しています。
 この2つの背景にある視点の違いについて、米国の精神障害者の就業支援アプローチから分かりやすい例をみつけました。

 統合失調症は多くの場合、薬物療法が効果的ですが、一部、薬物療法でも妄想、幻覚、独語、整容上の問題が残る場合があります。
 例として上げられていたのが、「職場に入ると、邪悪な存在が同僚や上司を支配しているという妄想にとりつかれ、独り言も頻繁にあり、また、風呂にも入らず服装も汚い」という人でした。
 「妄想、幻覚、独語、整容上の問題」、これらはICFで分類できる、機能障害や活動制限です。これに対して、医学的視点と生活機能的視点では、対応が全く異なります。

 医学的視点では、これらを症状とみて、診断し、治療方針を立てます。DSM-IVで示されているように、精神障害の場合、まさに、これらの症状そのものによって診断するわけです。そして、病名が診断されれば、目的はその病気の治療です。仕事は一つのリスクファクターとして扱われます。
 
medvsfunc.gif 一方、生活機能的視点では、「妄想、幻覚、独語、整容上の問題」を症状とではなく、それ自体を生活機能としてみます。そして、心身機能、活動、参加の内的な関係性を問題にし、それには環境や個人因子が関係するものとみます。就業支援の場合には、職業生活に対して、これらの生活機能の問題がどう影響するか、それ自体を問題にします。
 この例での具体的な解決法は、次の通りでした。これらによって、その人は要求される仕事を十分にできるようになったのです。
・朝の「魔よけの儀式」を認める:職場の周りに塩のようなものをまくことで、本人が安心できるので、それを認め、夕方には塩の掃除をさせることにしました。
・少し騒がしい職場に配置する:独語を誰も気にしません。
・制服に着替えさせる
・強制的シャワーのジョブコーチ:不潔が目立つ場合には職場からジョブコーチに連絡すれば、強制的にシャワーを浴びさせるように取り決めた。

 これによって、「病気があっても仕事ができる」ということを達成しているわけです。これはまさに新しいタイプの「Science & Arts」だなと驚きました。医学的専門性とも異なり、また、「仕事はできない」との決め付けによる支援とも異なります。

 ICFの開発時にWHOの担当者がよく言っていたのが、「啓蒙から科学へ」でした。確かに、今まで多くの先入観が支配していた障害の分野に、生活機能的視点での科学的取組が行われることで、全く新しい専門性が確立できると思います。

 難病患者の就業支援にもどると、これは医学的視点からはマイナー中のマイナーな分野ですが、生活機能的視点からは最も問題が鮮明になる「要」の分野だといえると思います。
posted by YH at 10:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 研究会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月27日

難病患者の就業に効果的な環境整備や支援とは?

2005年に行った難病患者の就業支援についての調査の中間報告書が5月中旬には印刷できる見通しです。大変お待たせしました。

この調査で最も重視したのが、「これをやれば、実際に職業上の問題が解消・軽減される」と事業主や政策立案者に説明できる「本当に効果的な雇用管理・支援」を明らかにすることでした。

注目すべき結果の一つとして、現状では難病患者には多くの職業上の課題がある一方で、適切な環境整備や支援を行うことによって、ほとんどの疾患でそれらの問題を劇的に解消・軽減できる見通しが示されたことがあります。

今回の分析による、疾患別に優先して整備すべき項目のリストは、
http://plaza.umin.ac.jp/custwork/nanbyo_summary2/index.htm
で見ることができます。(中間報告書にはこれより整理されたものが付録でつきます。)

これまでは、患者の要望、事業主や専門家の意見などに基づいて、必要な支援を明らかにしようとすることが多いのですが立場の対立が起こってしまいます。今回は新しい障害の考え方に基づいて、「実際に問題解決に有効なもの」という基準で環境整備項目と問題発生状況を関連づけて検討し、事業主と患者の双方が合意できる内容とすることを目指しました。

今回の難病就業支援パイロット事業は、非常に短期間で成果を上げる必要がありますが、この調査結果をみれば十分に可能だと確信できます。なお、優先的環境整備項目については、わかりやすいガイドブック的なものにすることを考えています。

中間報告書でのその他の内容は、追々ご紹介します。
posted by YH at 06:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 研究会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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